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2006年3月19日 (日)

冬の約束

 空気が澄んでいる冬の日。多摩川にそって、冷たい風が吹いている頃。
 昔の約束を確かめたくて、等々力緑地から下流に向かって、土手沿いの道を自転車で走り出した。サイクリング道はよく整備されている。ガス橋を通り、そのまま行くと道が切れたり、蛇行したりしながら、道は細くなっていく。何度か、側道に出ながら、進んでいくが、やがて、行き止まりになった。
 結局、道は海までつながっていなかった。やはり、ガス橋を渡って、東京側から進まないといけないのかなと思いながら、目の前の静かな風景をただ眺めていた。
 蜃気楼のようにビルの姿が揺れている。


 
 ずっと昔、「この土手の道はどこまで続くの」とPに聞いたことがある。「海まで続いているのよ」と答えながら、「いつか、一緒に海を見てみたい」と言っていた。
 それから、何年かすぎて、いろいろなコトが起き、僕は大人になった。土手の散歩道の約束など、とうの昔に忘れていた。Pとも別れ、結婚して、日常に包まれ、あわただしい時間が過ぎていた。

 去年の冬。海に落ちる夕日を眺めていると、何故か昔の約束を思い出した。コノ道ハ ドコマデ ツヅクノ?風にのって、Pの声が聞こえたような気がした。

「約束を守らないのね」Pの別れ際の言葉が蘇った。
「そんなコトはないさ。ちょっと待ってほしいだけなんだ」
「ワタシを愛してるなんて言ったくせに、何もできないじゃない」
「あれは嘘だったのね」
「嘘じゃないさ」「ウソよ!」
「いつも約束をして、忘れてしまって、それで・・・」
彼女の涙があふれ出た。肩が振るえ、拳が机をゆっくり叩いた。

 そう、約束を守らなかったのは一度きりじゃない。愛していたかも分からない。立ち止まっていたわけじゃない。怯え、逃げたのは君じゃない。ボクハ コワクテ、ニゲタンダ。記憶の向こうから、呟く声が聞こえる。

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